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なぜパンは発酵食品?関わる微生物とパンの作り方を解説
パンが発酵食品だと知っていましたか?また、パンが作られる途中で発酵がどう関わっているのか気になりますよね。
この記事では、パン作りの歴史やパンがなぜ発酵食品なのか、どのような微生物が関わっているのか解説します。ふだん食べているパンの世界が広がること間違いなしです。
なぜパンは発酵食品なのか
パン作りの歴史
パンと人々の歴史は非常に深いものがあります。考古学的証拠によれば、紀元前8000年頃にすでにパンのような食物が存在していたとされています。
古代エジプトで酵母を使った発酵パンが作られるようになり、その技術はローマ帝国を経てヨーロッパ全体に広まっていきました。
最初のパンは発酵していなかった?
最初のパンはおそらく発酵していなかったと考えられています。これは単に粉と水を混ぜ合わせ、火で焼いたもので、現在の「平たいパン」に近い存在でしょう。
しかし、何千年もの時間を経て、特に酵母という微生物の発見と利用によって、パンは進化していきました。
この酵母が糖を分解しガスを出すことで、パンはふわふわと膨らむようになったのです。
この発酵プロセスは、パンがただの「食べ物」から「おいしい食べ物」へと変貌を遂げる重要なステップとなりました。
パンに発酵はなぜ必要?
発酵とは、簡単に言えば、微生物が働いて食材が化学的に変化するプロセスです。パンにおいて発酵はなぜ必要なのでしょうか。その答えは、食感、風味、保存性にあります。
まず、食感についてですが、発酵によって微生物が生成するガスがパン生地を膨らませます。特に酵母が糖分を分解して生じる二酸化炭素ガスがこの役割を果たします。
このガスによって生地が膨らむことで、焼き上がった後のパンはふわふわとした食感になるのです。
次に、風味です。発酵過程で微生物が生成する物質には、パンに独特の風味をもたらすものが多くあります。
たとえば、酵母が作るアルコール類や有機酸が風味を豊かにしています。
そして、保存性です。発酵によってpH値が下がることもあり、これが微生物の増殖を抑制する作用があります。
その結果、パンの保存性が向上することもあるのです。
発酵食品であるパンにはどんな例がある?
パンは多種多様で、それぞれが発酵によって独特の特性を持っています。例としては、以下のようなものがあります。
食パン | 最も基本的な発酵パンで、酵母によってしっかりと発酵されています。ふわふわとした食感と、バターやジャムとの相性が抜群です。 |
バゲット | フランス発祥の発酵パンで、外側はパリッと、中はもちもちとした食感が特徴です。発酵時間が長く、風味が非常に豊かです。 |
クロワッサン | フランスではなく、オーストリアが起源とされるこのパンも、発酵によってその独特の食感を得ています。多層に折り重ねられた生地が発酵によって膨らみ、独特の層状の食感を作り出します。 |
ソードーブレッド | これは天然酵母を用いたパンで、商業酵母を一切使わないものもあります。風味が非常に豊かで、発酵時間も長いため、独特の風味と食感が楽しめます。 |
以上が発酵パンのいくつかの例です。各種の発酵パンがどのような発酵プロセスを経て、それぞれ独自の特性とおいしさを持っているのかを理解すると、パンがもつ多様性とその奥深さに改めて驚かされます。
パンが作られる過程で関わる微生物
次の項目では、パンが作られる発酵の過程で関わる微生物を紹介します。
パン作りには何の微生物が関わっているか
パン作りで最もよく使われる微生物は「酵母(Saccharomyces cerevisiae)」です。
酵母は単細胞の真菌で、糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生成します。この二酸化炭素がパン生地を膨らませる主な要因となります。
また、酵母が生産するアルコールや有機酸は、パンの風味や保存性にも影響を与えます。
ほかにも、ラクトバチルスなどの乳酸菌が使われることもあります。乳酸菌は、酵母とは違った風味を生み出し、パンのpHを下げて保存性を高める効果もあります。
なお、市販のインスタント酵母やドライ酵母は、発酵速度が早いという特長があります。一方で、天然酵母は発酵に時間がかかりますが、その分、風味が豊かになるとされています。
天然酵母パンとは?
天然酵母パンとは、野生の酵母菌と乳酸菌を使って発酵させたパンのことを指します。
一般的には、穀物やフルーツから採取した自然界に存在する酵母と乳酸菌を使って、数日〜数週間かけてじっくりと発酵させます。
天然酵母パンは、酵母と乳酸菌が共存する「種」と呼ばれるものを使って作ります。
この「種」は、一度作れば何度でも使い回すことができ、長い時間をかけて発酵させるため、非常に風味が豊かなパンができます。
天然酵母の活性化には時間がかかりますが、その分、生成される有機酸やアルコールが多種多様で、複雑な風味のパンに仕上がります。
また、天然酵母パンは低GI(グリセミックインデックス)であるとも言われており、炭水化物の吸収がゆるやかになる可能性があります。
ただし、天然酵母パンは手間と時間がかかるため、自家製では挑戦が必要です。
また、気温や湿度にも左右されやすく、一定の条件下でじっくりと育てる必要があります。
以上のように、パン作りに関わる微生物は非常に多く、それぞれがパンに異なる特性や風味をもたらしています。
特に天然酵母パンは、その多様な微生物の働きによって、一段と豊かな風味と食感を楽しむことができるのです。
パンの作り方
パン作りは一見シンプルなように見えますが、実は多くの科学と技術が関わっています。
特に、発酵過程はパン作りの中でとても重要なステップであり、酵母などの微生物が大活躍します。
パン作りの手順!どのタイミングで発酵が関わる?
1. 混ぜ合わせる(ミキシング)
まずは、小麦粉、水、砂糖、塩、酵母などの必要な成分を混ぜ合わせます。
この時点で酵母も入れる場合と、後で追加する場合があります。どちらにせよ、このステップが始まると、酵母が糖分と接することで発酵がスタートします。
2. こねる(ニーディング)
生地をこねることで、小麦粉の中のタンパク質が結合してグルテンが形成されます。
グルテンのネットワークが強くなると、発酵ガスをうまく閉じ込め、生地がしっかりと膨らむことができます。
3. 発酵(フェルメンテーション)
ここで酵母が主役です。酵母は糖を分解して二酸化炭素とエタノール(アルコール)を生成します。このガスが生地を膨らませる原動力となります。
通常、このステップでは生地が約2倍に膨らむまで待ちます。
4. 焼く(ベーキング)
生地が十分に膨らんだら、高温で焼き上げます。このステップで生地は固まり、色もつき、美味しいパンが完成します。
パン作りの発酵で微生物が活躍するポイント
酵母の働き
発酵過程での酵母の役割は非常に大きいです。
酵母は生地の中の糖を消費して二酸化炭素とアルコールを生成します。この二酸化炭素がガスとして発生し、生地を膨らませるわけです。
酵母の種類や環境条件(温度、湿度など)によっても発酵の速度や品質が変わることがあります。
こねと発酵
こねることで生地に弾力が生まれ、発酵ガスが均等に分布するようになります。
グルテンの形成が不十分なときは、ガスが抜けやすく、生地が均一に膨らみません。
発酵時間と温度
発酵の時間と温度は、酵母の活動に大きく影響します。低温でゆっくりと発酵させる方法もあり、これはより風味豊かなパンになるとされています。
おいしいパン作りには、発酵と微生物が深く関わっています。発酵によってパンはふわふわと膨らみ、おいしさも倍増します。
微生物が働くタイミングや、手作りパンの楽しさも知って、ぜひ自分でもパン作りに挑戦してみてください。